分類:サトイモ科 テンナンショウ属
学名:Arisaema urashima (Arisaema thunbergii Blume subsp. urashima ←ナンゴクウラシマソウの亜種とする説もある)
和名の由来:花序の先から紐状のものが上に突き出し、途中から垂れ下がっている様子が釣り糸を垂れている浦島太郎に見立てた
原産地:日本固有種
分布:北海道南部、本州、四国東部、九州(佐賀県)
性状:宿根性落葉多年草・・・有毒
草丈:20~60cm
花期:3~5月
↓山地の薄暗い林床・林縁や湿り気のある草原などに自生している。耐陰性が強く乾燥を嫌う。
地下に偏球形の球茎を形成し、周囲に子球をつける。球茎は有毒。

↓早春に地下の球茎から太くて茎のように見える偽茎が伸びてきて通常1枚の葉を付ける。偽茎は暗緑地に紫褐色の班紋が入りる。葉は鳥足状複葉で裂片は深く切れ込み15枚前後の小葉からなる。長さは15cmほどになるが頂小葉が最大。花序よりも高く伸びる。幼い個体では3~5枚の小葉をつける。
小葉は先が鋭く尖る狭卵形か長楕円形で通常やや光沢のある暗緑色であるが、まれに斑入りや、銀葉の個体がみられる。
葉は秋から冬にかけて落葉してしまう。偽茎は多肉質。

↓偽茎の基部から花茎を直立し、褐色の長さ15cmほどの仏炎苞に包まれた肉穂花序(太い棒状の花序)に花をつける。
花は仏炎苞の下の方にあって見えない。仏炎苞の下部は白っぽい。
仏炎苞は濃紫色、緑紫色、緑色など変異があり、内面には白い条がある。口辺部はやや開出する。
舷部(蓋のように被さっている蛇の頭頂に似た部分)は広卵形で先が尖り、開花の進展とともに垂れ下がる。
肉穂花序の先端の紫黒色の付属体は上に向けて鞭状に長く40~60cmに伸び、途中で釣糸のように垂れる。この鞭状のものは、虫媒花なので虫を誘引するためでしょうか?その役割は不明。付属体基部の膨れた部分にしわはない(近縁種のナンゴクウラシマソウは花序付属体の下部の膨れた部分は淡黄白色で小じわが多い)。


↓雌雄異株(雌雄偽異株ともいう)で、肉穂花序を形成する多数の花には花弁がなく、雄花は雄しべのみ、雌花は雌しべのみで形成されている。大きく成長すると雄株から雌株に性転換する。仏炎苞は葉より低い位置にある。
受粉すると、秋にかけて果実を成熟させる。結実した雌花群は多数の果実をつけており、当初は緑色であるが秋に成熟すると朱赤色に変わる。未成熟の果実は有毒。果実の画像は同属の
ユキモチソウを参照。
種子は直径3~6mmの球形。自然条件下で秋に散布された種子は、2年目の春に3~5小葉の本葉を展開する。

↓雄株の仏炎苞下部の隙間で、昆虫の出口になる。右は仏炎苞内部の紫色の雄しべ。

偽茎:葉の基部が合わさって刀の鞘のようになっている葉鞘(ようしょう)の部分のことで、茎のように見えるので「偽茎」とよばれる。
性転換:テンナンショウ属の植物は性転換をすることが知られており、本種でも同様である。比較的小型の個体では雄性となり、仏炎苞内部の肉穂花序に雄花群を形成し、大型の個体では雌性となり、肉穂花序には雌花群を形成する性質がある。球茎に養分が多く蓄積すると雄株から雌株に性転換する。
受粉:雄花から雌花への花粉の送粉はキノコバエの仲間による虫媒によって行われる。雄性の仏炎苞の開口部から進入したキノコバエは雄花群から出された花粉を身にまとい、仏炎苞下部にある隙間から脱出する。雌性の仏炎苞ではキノコバエが脱出できる隙間がなく、開口部から進入したキノコバエは雌花群をうろつく間に授粉させられ、最後は脱出できずに死んでしまう。